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伊藤計劃「虐殺器官」「ハーモニー」を読んで。(下) | 【福岡市早良区・城南区】整体・マッサージ師も通う「そんごくう整骨院」

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伊藤計劃「虐殺器官」「ハーモニー」を読んで。(下)

2014.01.22 | Category: その他

で、伊藤計劃「ハーモニー」について。
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2008年12月18日に刊行されたこの本は、
第40回星雲賞(日本長編部門)および第30回日本SF大賞受賞、
「ベストSF2009」国内篇第1位、
「虐殺器官」が1位を飾った「ゼロ年代SFベスト」国内篇では、
第11位にランクされています。
また、2010年7月に英訳版が刊行された際には、
2010年フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞しました。
賞の権威や詳細はあまりわからないぼくですが、
名だたる賞を総なめにした作品と言ってもいいと思います。
さて、あらすじですが、
21世紀初頭に発生した全世界規模の騒乱 【大災禍(ザ・メイルストロム)】
それから半世紀後、高度な医療経済社会が世界に築かれました。
人々は従来の政府に代わる統治機構 『生府』 の下で、
健康と人間関係の親密さを至上の価値とする社会に生活します。
しかし、その健全で幸せな筈の社会を揺るがす大事件が起きたのです。
と、まあこんな感じです。
虐殺器官以後の世界を描いていますので、
作中に出てくる用語は前作を読んでいた方が理解し易いでしょうが、
(前作では「オルタナ(副現実)」と呼ばれたウェアラブルコンピューターが、
 今作では「オーグ(拡現)」と呼ばれている、など。)
登場人物が前作とダブっていない独立した作品であるため、
今作から読む事も出来ると思います。
が、やっぱり「虐殺器官」→「ハーモニー」の順で読んで欲しいなあ。
さて、ぼくの感想ですが、
この物語で語られる医療経済社会って、
ともすれば今の日本、今の世界が目指している社会なんでしょうね。
個の「わたし」より社会の「わたしたち」の形成、
その方が管理する側からしたらおあつらえ向きですから。
完成された社会システムが構築された暁には、
とどのつまり「わたし」は要らなくなってしまう、
という論理には生理的に嫌悪を感じましたが、
未来を安全に明るいものにするためには仕方ないロジックなのかな、と。
「僕が僕であるために 勝ち続けなきゃならない」のは、
もうすでに前近代的思想なわけであります。
ただ、その清く正しい健康的な未来に憧れるか、と問われれば、
間違いなく「NO!」ですけれど。
ラストは決してハッピーエンドではなく、
ぼくにとってはバッドエンドではありました。
が、この落とし方しかなかっただろうし、
この結末にはなんの不満もありません。
ただ、ぼくが感じた難点を生意気にも言わせていただけば、
(ここからは多少ネタばれを含みますので注意!)
今イチ、御冷ミァハの「その後」の豹変ぶりについていけませんでした。
なぜ、ミァハを霧慧 トァンの父は引き取ったのか。
どうやってミァハは〈異端児〉たちのカリスマになったのか。
自分の意思による「死」に固執していた彼女が、
どうやったら真逆と思われる程の振幅といえる宗旨替えをしたのか。
それが引っ掛かって、ストーリーに乗れませんでした。
とはいえ、最高に面白い小説であることは疑いもない事実だと思います。
今、ぼくが新作を読みたいと切に願う作家さんではありますが、
残念ながらこの作者、伊藤計劃は2007年に作家デビューしてわずか2年、
2009年に34歳の若さで早逝しました。
数々の賞を獲った「ハーモニー」ですが、
授賞式に作者自身が出席することは叶いませんでした。
「ハーモニー」を書いた時期は自身が肺がんと戦っていた時期。
自分の死を背後に感じながらこの作品を完成させたのだと思うと、
感慨深いものがあります。
ところで、伊藤計劃というペンネームですが、
「計画」ではなく「計劃」という漢字を使った理由は、
自身の大好きな映画、ジャッキー・チェン主演の香港映画
「プロジェクトA」の原題「A計劃」から取ったそうです。
奇しくもぼくがその事実を知ったのは香港の地でした。
また、伊藤計劃氏の生まれは1974年10月。
生きていたらぼくと同じ、39歳となります。
香港で「虐殺器官」を読了した時、
なにか不思議な因縁を勝手に感じたのを思い出しました。


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